受け継がれる伝統

界 加賀をつくる人々

建築、器、工芸など、界 加賀の前身である「白銀屋」の時代から守り伝えてきた加賀地方の伝統。当館の改築にあたり、各分野の第一線で活躍する方々から素晴らしいご協力を得て、伝統の中に新しい感性が息づく宿に生まれ変わりました。界 加賀を彩る様々な伝統工芸をご紹介します。

加賀伝統建築

江戸時代には加賀藩主も逗留したという由緒ある建物。正面の紅殻格子(べんがらごうし)は、細かな木を縦と横に組み合わせた加賀地方の伝統的な建築様式です。防腐も兼ねた着色に紅殻(べにがら:酸化鉄を主成分とする赤色顔料)が使われることから、紅殻格子と呼ばれています。また、「うだつ」と呼ばれる瓦を乗せた袖壁が屋根の両端に突き出ているのは、古い町家に特徴的な構造。防犯・防火の機能を持ち合わせながらも情緒ある凛とした佇まいが見る者の心を惹きつけます。館内で見られる枠の内(わくのうち)は、太い大黒柱と大きな丸太梁を、金物を一切使用せずに組み上げたもの。現代では同じ材料で再現することが難しい、稀少価値の高い建築様式です。

山本信幸(株式会社社寺建)

国の有形文化財にも登録されていた伝統建築の修復を担当したのは、株式会社社寺建の山本信幸棟梁。東京の歌舞伎座や水天宮、数々の重要文化財の修復も担当してきた伝統建築の専門家です。わずかに傾いていた建物を立て直すため柱や梁を1本1本取り外し、もう一度組み直す過程で丁寧に塗りも施しました。宮大工の心を受け継ぐ匠の技術で、歴史ある建物の風情と魅力がよみがえりました。

  • プロフィール
    1958年生まれ。奈良県の薬師寺金堂や福井県の朝倉氏遺跡の屋敷跡復元などを担当した後、1984年に藤田社寺建設株式会社に入社。棟梁として国宝や重要文化財、特別史跡などの復元に携わる。2009年に独立し、株式会社社寺建を設立。2012年~2013年には東京の歌舞伎座の建て替えにも尽力。

九谷焼

金沢市や加賀市など石川県南部で生産される、世界的にも有名な色絵の磁器。明暦元年(1655年)、加賀藩前田家の支藩である大聖寺藩初代藩主前田利治公が九谷村(現在の加賀市山中温泉九谷町)に窯を築いたことがその興りです。赤・黄・緑・紫・紺青の五彩を使用し、絵画的で大胆な上絵付けが特徴です。近年はカラフルでポップな作風も多数。界 加賀では、客室の表札や茶器に、お食事の器にと、シーンにより様々な作品を使い分け、目を楽しませます。

山本長左(妙泉陶房)

陶房では、弟の篤氏がろくろ形成と焼成を担い、兄の長左氏が江戸時代からの技法である型打ちで成型、絵付けを行います。伝統的な型を収集して大切に活かす作風。白山の麓から産出する白い陶石を基に、作品に合わせて違う成分の土を合わせ、色の深みや味わい、面白さを出していきます。使い勝手を考え、料理が映える器をと願って吟味した「美しい」器づくりを信念としています。

  • プロフィール
    1953年、小松市生まれ。1975年に妙泉陶房を開窯し、独立。1990年、宮内庁より依頼を受け、天皇皇后両陛下御紋入の器を制作。1991年、宮内庁「饗宴の儀」和食器11品目を納入。2000年には日本政府より依頼を受け、国際度量衡局に対し、メートル条約125周年記念の白磁金襴手大皿を制作。

竹内靖・智恵(萌窯)

九谷焼技術研修所の講師も務めるご主人が成形を担い、奥様が染付と、夫婦で息の合った作品づくり。「厳しいコーチと言うことを聞かないプレーヤー」と言って笑顔を見せる奥様。全国の展示会に出品し、地域性や食生活によって器の使い勝手も変わることも織り込んだ、きめ細かい作品づくりが高い評価を得ています。伝統工芸でありながら日常使いの食器を作り、生活に根ざした生産者であることをシビアに追求している、若手作家たちのリーダー的存在です。

  • プロフィール
    竹内靖:1987年、石川県立工業高校工芸科卒業。1989年、石川県立九谷焼技術研修所専門コース修了。卒業後は京都・九谷などで修業を積み、1994年に独立。2010年、九谷焼伝統工芸士(成形部門)認定。石川県伝統産業優秀技術者奨励者表彰。
    竹内智恵:1991年、石川県立九谷焼技術研修所専門コース修了。卒業後は妙泉陶房 山本長左氏に師事し、1997年に独立。萌窯にて制作を始める。2010年、九谷焼伝統工芸士(加飾部門)認定。

九谷焼のこれからを担う
若手作家たち

  • 池島直人(九谷焼体験ギャラリーCoCo)

    青手九谷という、紫・黄・緑・紺青を使い、全面を塗りで埋める「塗り埋め手」を好んで制作。古九谷を再興した吉田屋の粋人好みな作風にも影響を受け、伝統的なデザインや写しの図案をベースにしながら、食器、花器、界 加賀の客室表札も制作。数字のフォントと絵柄をマッチさせ、赤色で華やかさを加えたりと10パターンの表札を制作しています。

    • プロフィール
      1974年生まれ。2000年、京都府立陶工高等技術専門校図案科卒業。京都にて富田一嗣氏に師事。2003年、独立。2011年より山代温泉の九谷焼体験ギャラリーCoCoにて活動。

  • 池島仁美(九谷焼体験ギャラリーCoCo)

    修行先の妙泉陶房 山本長左氏からの教えもあり、九谷焼の伝統的な模様である唐草、小紋、山水の入った絵を描く。花の好きなお母様が山から採ってきて生けていた風景が原点にあり、スケッチをしながら、描きたい柄との出会いを大事にしています。近年ひらめいた出会いはクローバーと鳩。鳩は一生パートナーを変えないので、夫婦茶碗に描いたりと優しいデザインが特徴です。

    • プロフィール
      1979年、加賀市生まれ。2002年、石川県九谷焼技術研修所本科修了。卒業後は妙泉陶房 山本長左氏に師事し、2006年に独立。

  • 弦巻玲子(しばねこ工房)

    大学で美術(焼き物)を学んだ後、瀬戸や常滑、加賀をまわり、その後トルコで海外の焼き物に感動。自分の場を探していた折に曽宇窯 橋本氏と出会い、絵付けが新鮮で心を揺さぶられ入門。橋本氏のおおらかさに包まれて修行をしながら自分らしい作品を模索しました。パッと目をひくデザインより、使うことで馴染んでいく、変わらないものを作り続けたいという思いが伝わる作風です。

    • プロフィール
      東京都出身。武蔵野美術短期大学専攻科卒業 。曽宇窯 橋本俊和・薫の両氏に師事。2010年より石川県立九谷焼自立支援工房にて活動。くらしの器を主に制作。

  • 道場八重(道場工房)

    自宅に窯を備え、九谷焼ならではの技法を用いて、柔らかな線を好んで描く作家。草花や動物、子供などふわっとした温かみのあるものをテーマにしつつ、九谷の伝統的な柄をアレンジ。現代人が生活する中で日常使いにして欲しいと願っての作品づくりは、4人の子どもを育てながら制作に打ち込む自身の姿を反映しています。

    • プロフィール
      1975年、加賀市生まれ。1998年、石川県立九谷焼技術研修所専門コース修了。1999年、石川県九谷焼伝統工芸展入選。2003年から2005年にかけて、石川県立九谷焼自立支援工房にて活動。2005年より自宅にて制作に励む。

  • 浦陽子(浦陽子工房)

    青の染付をした後に色を乗せていき、優しい色合いを出す作風。道具は全て自分で作るという曽宇窯 橋本氏の元で修業し、自身の工房でも使い勝手に合わせて手作りした道具が並びます。自分のリズムで調整できる蹴りろくろで成形。自力で回すので生地も少し柔らかめ、それが面白い歪みや優しさ、味わいになります。日常使う食器を丁寧に作り、柔らかい温かみが生活に馴染んでくれることを願って制作しています。

    • プロフィール
      奈良県生まれ。1995年、金城短期大学美術科卒業。1997年、曽宇窯 橋本俊和・薫の両氏に師事。2005年に独立。食器を中心に制作。

  • 小林かのこ(陶房ななかまど)

    美大を卒業してから瀬戸で1年技術を学び、その後九谷青窯に入社。初めて住んだ加賀の地は寒く、温かいものが欲しいと探した時に出会ったのが土鍋でした。土鍋作りに使える土や釉薬を工夫しながら作品づくりに励み、金沢市で独立して17年。土鍋は火にかけられる粗い土を使うので、沸騰しても鍋から出る泡は細かく、そのため素材が暴れず煮崩れしないという特徴があります。熱伝導がゆっくりなのでご飯、味噌汁、煮物などおいしく作ることができ、調理後はそのまま卓上に出せるのも魅力です。

    • プロフィール
      東京都出身。武蔵野美術大学短期大学部工芸デザイン科卒業。九谷青窯・秦耀一氏に師事。その後独立し、夫の大と「陶房ななかまど」設立。主に日常で使える食器と土鍋を制作。

山中漆器

全国一の木地轆轤挽き物産地である加賀市の山中温泉で生産される漆器。木地師には人間国宝の川北良造氏も。輪切りにした縦木取りの木地に漆を塗っては研ぐの繰り返しにより、美しい光沢と深みのある色合いを実現します。お食事の器はもちろん、客室の壁掛け、茶托にも取り入れ、上質な空間を演出します。

西本浩一(株式会社西本)

山中漆器制作の西本浩一氏が、匠たち(木地:河口氏/下地:中山氏/塗り:清水氏/絵付け:辻氏、田中氏)の技を結集して、「盛筋二段先付」「波蒔絵煮物椀」などを制作。加賀にちなみ、高山植物の白山風露(はくさんふうろ)や加賀三山、流水のきらめきが描かれています。吸い付くようにピッタリと合う蓋物の技。強度のあるミズメを用い、トノコ、ウルシ、研ぎを繰り返す下地作りと塗りの技。蒔絵師が和紙の絵型を作って描き、細かい金を巻き込んでいきます。発注から1年~2年がかりで艶めく器が仕上がります。

  • プロフィール
    1966年、加賀市生まれ。1990年より漆器制作に携わり、2009年に独立した後は多くの職人たちを束ね、主に茶道具を中心に作品を生み出してきた。完成までに数年を有する茶道具の棗など、美術的価値の高い作品を、茶道文化の中で鍛え熟成しながら制作を続けている。

加賀友禅

京友禅と同じく宮崎友禅斎を祖とし、加賀御国染を基に確立された染色技法です。加賀五彩(藍、臙脂、草、黄土、古代紫)と呼ばれる落ち着いた色味と、鳥や草花などの精緻な絵柄が特徴。客室のベッドルームでは、加賀友禅をモチーフにしたパネルとベッドライナーがおやすみ前のひとときを彩ります。

毎田仁嗣(毎田染画工芸)

加賀友禅は一般的に工程ごとに分業して仕上げますが、ここは全工程を一貫して行っている工房。伝統的に自生の草花をモチーフにして下絵を描きます。糊置き(糊を絞りながら輪郭を描く作業)、染色、最後に糊を流して白い輪郭を浮かび上がらせるという技法を10名ほどの職人さんたちが踏襲しています。絵画調の作風に幾何学模様を取り入れたり、日常使いの小物に友禅柄を配するなど、若い世代にも手で染めた物の良さを伝えたいと制作に取り組んでいます。

  • プロフィール
    1974年、金沢市生まれ。1998年より父・毎田健治に師事。2000年、加賀友禅技術保存会展 染帯の部 新人賞受賞。加賀友禅新作競技会 内弟子部門 金沢市長賞受賞。2009年、金沢市工芸展 石川県知事賞受賞。2014年、第70回現代美術展 金沢中央ライオンズクラブ賞(次賞)。金沢市工芸協会会員/協同組合加賀染振興協会会員。

加賀水引

加賀水引は金沢の希少伝統工芸の一つで、主に結納飾りとして発展してきました。近年ではインテリアやアクセサリーにも取り入れられています。界 加賀では、ご到着時にフロントホールで出会う優雅なオブジェにはじまり、客室の障子や置物などにもさりげなくあしらい、上品なかがやきを放ちます。

廣瀬由利子(自遊花人)

伝統の水引を現代感覚でアレンジした「和のこころ・和のかたち」をコンセプトに、水引が織りなす表現の可能性を皆様にお届けしています。色鮮やかな133色の自遊花人オリジナル水引「四季の糸」は、従来ではあまり見られなかった細やかなグラデーションの表現も可能にしました。今回新たに取り組んだ客室の障子は加賀五彩をイメージしており、結びからこぼれる光が美しい影を作り出しています。

  • プロフィール
    1967年、金沢市生まれ。独学で水引の技術を習得し、「日常楽しめる水引」をコンセプトに、“Wadern Style”(和+モダン=ワダンスタイル)の作品を数多く生み出す。2004年、石川県デザイン展奨励賞受賞。2009年、「刺し水引」で特許第4309224号取得。2011年に株式会社自遊花人を設立し、2012年より星野リゾート 界 加賀(旧 白銀屋)の館内装飾に携わる。
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

関連する記事

  • ミシュランガイドが評価した

    冬のずわい蟹料理 2016
  • 加賀ならではの開運旅を楽しむ

    冬のご滞在 2016-2017
  • 加賀百万石の城下町・金沢へ

    期間限定の無料送迎バス運行